助けて!涙がでるほどの焦りやイライラ、ひどい劣等感に打ち勝つためのアドラー心理学

仕事のレベルや成果が同じくらいだと思っていた同期が先に出世した。仲がいいと思っていて、楽しくチームで仕事をしていたと思っていたのに、実は陰口を叩かれていた。自分では一生懸命にやっているのに、どうしても成果がだせない。どれだけやっても、自分に自信がもてない。そんな時、ひどく焦ったり、イライラしたり、時には涙が出るほどの劣等感に襲われることはないでしょうか。

生きている限り、誰しも劣等感を感じることはあると思います。劣等感を感じない人はいないとわかっていても、押しつぶされそうになることもあります。

今回、私自身が、実際に友達が先に昇進し、自分ではどうもいろいろうまくいかず、自分に対する自信のなさや、劣等感にさい悩まされ涙が出て、会社にいきたくなくなるほど、気持ちが辛く、どうしようもない。

そんなときに心が救われた1冊。自分が助けられた部分の考え方を備忘録かねて紹介します。

結局、自分が強くなるしかない。

劣等感を感じるとき「自分の何が悪いんだろう」と原因を追求したくなりますよね。しかし、アルフレッド・アドラーはこう言っています。

人は都合のよいように世界を見て"今の自分"への不満を何かのせいにしたがっている。「仕方がない」と思いたいからだ

by アルフレッド・アドラー

人は、原因探しをしている間は悩みなんて本当に解決はしません。それは、何かのせいにしたいだけ。

人は必ず人と関わって生きていくため、人は傷つかないまま、人を傷つけないまま生きることはできません。何かに逃げることもできません。解決策は一つだけ。自分が強くなるしかないんです

しかし、自分が強くなるということはどういうことでしょうか。自分を分析して、強みを見つけることでしょうか?いいえ、そうではありません。「自分を好きになること」です。今の自分を100%認めることができれば、どんなことがあっても後悔したり、落ち込んだりすることはなくなるはず。

勇気があり、自信があり、リラックスしている人だけが、人生の有利な面からだけでなく、困難からも益を受けることができる。そのような人は決して恐れたりしない。困難があることは知っているが、それを克服できることも知っており、・・・準備ができているからである。

by 個人心理学講義  P16

自分で自分を認めて強くなるには?

それでは、自分で自分を認めるには、どうしたらよいのでしょうか。アドラーの著書では、こう言っています。

「意識」と「無意識」という言葉を、別の要素として使うことは正しくない。意識と無意識は同じ方向へ一緒に進んでいくのであり、しばしば信じられているように、矛盾するものではない。・・・両者の一致した動きの目的を発見することだけが重要なのである。

by 個人心理学講義  P26

つまり、自分で自分を認めるには、自分は本当は何をしたがっているのかに気づくことです。なぜなら、人は誰しも無意識に「こうなりたい」という何かを達成しようとして行動を洗濯する生き物だからです。

ここが、今までの心理学とアドラーの心理学の異なる点。人間の行動を因果律で考えるのではなく、「目的論」で考えます

「なぜあの人は怒りっぽいのか」を考えるとき、「もともと怒りっぽい性格だから」のように、原因を考えがちですが、アドラーの場合、怒っている人は、その人独自の目的を達成するために「怒る」という行動をとっているのだと見ます。

現在のアドラー心理学は、次の5つの前提を基本としています。

アドラー心理学の前提

1. 目的論

人はまず目的を持ち、その方向に思考し、行動する。

2. 全体論

人の意識、無意識、思考、行動は個人として一貫している。

3. 社会統合論

人は社会に埋め込まれている社会的な存在である。

4. 仮想論

人は自分、他者、周りの世界を見たいように見ている。

5. 個人の主体性

人は自分の人生を自分で決めることができる。

そもそも「劣等感」って何だろう?

そもそも、劣等感とはなんでしょうか。

人はもともと「優れた自分になりたい」という目的を持っています。その理想状態(プラス)から見れば、今の自分は必ず劣った存在(マイナス)です。それを「劣等感」として感じます。

劣等感は、誰しもが抱く感情ですが、この感情にこだわり、いろいろな理屈をつけて自分の中で「実体化」してしまった場合、これは「劣等コンプレックス」になります。

例えば、「私はもともと頭が悪いので勉強ができない」ということによって、「勉強」という当面の課題を避けることができます。このように、課題を避けるために劣等コンプレックスを利用することができるです。

人は向上したいと思うからこそ、劣等感が生じます。そして努力することによって、それを補償しようとし、その行動の仕方は人によってさまざまです。

劣等感を補償するための努力の仕方が「個性」「性格」を作る

人は劣等感を補償するために努力をしますが、その仕方は人それぞれ。その方法が、結果的に「個性」や「性格」とよばれるようになります。

人はいつでも、より良い存在になろうと目的を持ち、それを目指して行動します。しかし、その行動の仕方は人それぞれに個性的なもので、その人それぞれの目標の設定と、その達成の仕方を「ライフスタイル」とアドラーは呼びました。

これは、特に何か思い通りいならないことや、トラブルが起こると、それを解説する時にその人のライフスタイルが現れ、それに従い、考えや行動を決めていきます。

そのライフスタイルは、一人ひとりで異なりますが、その特徴によって、大まかに分類することは可能。以下、見ていきましょう。

4つのライフスタイルの分類方法

ライフスタイルの分類は、最優先目標「何を一番に大切に考え、最終的に目指しているか」を基準に考えます。

まず横軸に「受動的⇔能動的」をとります。この、どちらのタイプか考えましょう。

  • 目標を自分から動いて能動的に達成したいのか?
  • 周りの人を動かして受動的に達成したいのか?

次に縦軸には「対人関係優先⇔課題解決優先」をとります。この、どちらのタイプか考えましょう。

  • 対人関係が優先目標なのか?
  • 課題解決が優先目標なのか?
対人関係優先
受動的 B.好かれたい C.リーダーでいたい 能動的
A.安楽でいたい D.優秀でありたい
課題解決優先

これにより、できる4つのライフサイクルそれぞれの最優先目標は次の通りです。

 

A課題解決優先で受動的:「安楽でいたい」

B対人関係優先で受動的:「好かれたい」

C対人関係優先で能動的:「リーダーでいたい」

D課題解決優先で能動的:「優秀でありたい」

各ライフスタイルごとの特徴

各ライフスタイルごとの特徴をまとめると、このようになります。

A

最優先目標「安楽でいたい」

→苦労するのが苦手。面倒になりそうだと察知すると、それを避ける努力をする。

強み

気楽さ。和んだ雰囲気を作り出すことが上手。

弱み

マイペースなのであまり成長しない。

B

最優先目標「好かれたい」

→一人からでも嫌われると落ち込む。周りの人に好かれるために気を使ったり、一生懸命にサービスする。

強み

親密さ。誰とでも仲良くなろうとする。

弱み

嫌われないように行動することが多いため、自分の考えや主張がない。

C

最優先目標「リーダーでいたい」

→周りの人をコントロールして自分が主導権をにぎる為に努力をする。

強み

リーダーシップを取れること。周りをまとめて主導権を握る。

弱み

頑固で柔軟性がない。

D

最優先目標「優秀でありたい」

→一人で自分の技量を高めようと努力する。周りの人に影響もされず、合わせることもしない。

強み

決めたことなら努力を惜しまず何でもできること。

弱み

何でも自分で解決しようとして、一人で背負いすぎてしまうこと。

自分や、自分の周りの人たちが、どのライフスタイルのタイプかわかることで、「なぜ、その人はその行動をとるのか」「自分はなぜこんな気持ちになるのか」が分解でき、少し楽になるかもしれません。

どうしたら劣等感を克服できるのか?

だれもが劣等感をもつとはいえ、やっぱり苦しいもの。どうしたら劣等感を克服できるのでしょうか。

それは、鍵になるのは「劣等感の捉え方」。自分の劣等感をどう捉えるかを考えてみることは、悩みを解消するためのヒントになるかもしれません。

劣等感を努力で補償しようとするとき、2つの考え方があります。

「あいつにはかなわない、悔しい」といった競争心や嫉妬心を感じ、克服するために努力をする場合、個人的な利益のために「優越への努力」をしていることになります。これは、必ず他者と敵対する原因となり、失敗は自分自身の敗北を意味します

一方、「この人たちに自分が役立てるとしたら、何ができるだろうか」と考えて努力するなら、自分を含む何らかの共同体のために「完全への努力」をしていることになります。これは、他者と一体となって努力している感覚を生み、失敗は努力のワンステップとなります

劣等感と向き合う2つの姿勢

1. 優越への努力

「人より優れたい」「あいつに勝ちたい」

→人のと敵対が前提。失敗は敗北。

2. 完全への努力

「共同体を成長させたい」「誰かの役にたちたい」

→一体感の中で頑張れる。失敗は共同体にとって財産。

同じ、自分の理想と現実の差分を埋めるために努力する行動でも、他者と比較せず、「この人たちに自分が役立てるとしたら、何ができるだろうか」と考えることができれば、劣等感を克服できるかもしれません。

それでも感情に支配されるときは?

そうはいっても、毎回「この人たちに自分が役立てるとしたら、何ができるだろうか」なんて神様のような考え方で考えられるはずもなく、怒りや嫉妬からくる劣等感や、後悔などの感情で、いっぱいいっぱいになることはありますよね。

そんな時は「使用の心理学」の考え方で、「私個人は、この感情を使って、いったい何を目指しているのだろうか」と客観的に考えてみることで、感情の支配から抜け出すことができるかもしれません。

心理学には「所有の心理学」と「使用の心理学」があります。

例えば自動車は、エンジン、ブレーキ、ハンドルなど、さまざまな役割をもつ部分から構成されています。それらはお互いに協力し合って、最終的には「目標地点に移動する」という目的を達成しようとしています。

人間も同様、意識や無意識、理性や感情、心や身体などを使って、全体の行動を決めているわけです。つまり、その人の行動を最終的に決めているのは「個人」ということ。これが「使用の心理学」です。

一方、「私の中の一部分が、私全体を所有している」と考えるのが「所有の心理学」です。「あの時は無意識や感情が自分を支配していたので、本当の自分ではなかった」と、自分の行動を、無意識や感情のせいにし、責任を逃れることができてしまえるので、便利な考え方ですよね。

でも、結局、感情に支配されていることに悩むことになります。そんな時は、「使用の心理学」に、考え方を切り替えてみるのが、結果的に克服の近道になりそうですね。

所有の心理学と使用の心理学

所有の心理学

「私の中の一部分が、私全体を所有している」

→「無意識」や「怒りの感情」が自分の全体を所有していたと考える(自分の行動を無意識や感情のせいにできる)

→以下のどちらかになる。

  1. 楽に言い訳できる
  2. 感情に支配されていることに悩む
使用の心理学

「個人がさまざまな部分を使って、目的に向かって全体を動かしている」

→「この感情を使って、自分が何をしよとしている?」と自分を探求する

→自分をより深く理解できる

結局、もともとの考え方を変えることが幸福の近道になる

自分のことに焦点を当てているからこそ、人と比較し、劣等感が生まれます。そんな時は、自分の行動がより大きな共同体にとってどういうことなのか、ということを考慮することが、幸福の近道です。

「自分の行動は、より大きな共同体にとって有益か?」という視点で行動を選択することができれば、そもそもの比較対象に、個別の他者が挙がってくることもないでしょう。

まとめ

今回、劣等感克服についてのみ、要点をまとめましたが、「最初からこの考え方を知っていたら、あの人のあの行動にイライラしなくてすんだのに」や、「あの人のあの行動はこういった目的があったのか」といった、知っていたらもっと生きやすくなるな、といった内容が他にも満載でした。

アドラー心理学は、知っているのと知らないので、今後の人生、相当幸福感が変わってくるかもしれません。

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心理学を知り、味方にすることができれば、人生、生きやすくなるかもしれませんね。ぜひ一度、どうしようもない劣等感につぶされそうな方は、読んでみると心が軽くなるかもしれませんよ。

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